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【信州の習慣】 「北信流お盃の儀」について [信州探訪]

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 北信地方で行われる宴席では、北信流というお盃(さかずき)の儀というものが存在(!?)します。「ホクシンリュウ」と聞くと、「北辰一刀流」と思うかも知れませんが、宴席などの「流儀」の事なのだが、これも知らない人が、その場に居合わせると吃驚するのではないかと思います。結婚式、葬式の後の「お斎」の席、同級会、法事、上棟式、歓送迎会、祝賀会など、あらゆる宴席で行われます。主賓や主宰者に祝意や感謝の意を表して献杯し、宴席のけじめとする儀式です。

 同じ信州でも、この習慣があるのは、東・北信エリア(中信である北安曇郡でも行われてる所がある)であるが、上田市や、小県郡、旧飯山藩の領地だったところではこの習慣はないそうだ。

 それでは結婚式を例に「北信流」の流れを再現してみます。宴も終わりに近づくと、司会者もしくは来賓代表が頃合いを見計らって、「僭越ながらみなさまにおはかり申し上げます。ここで新郎新婦にお喜びのお盃を差し上げたいと存じます」(拍手)と「動議」を出します。
続けて、「つきましてはその代表役割の方の指名をもお任せ戴ければ幸いでございます」(拍手)と、人選の同意を取り付けます。「お盃を差し上げる方は○○様と●●様、斡旋(お酌)の方は□□様と■■様、お肴は△△様にお願いいたします」と指名をします。指名された人は新郎新婦の席の前に進み出て、盃を渡してお酌をします。新郎新婦はお盃を受けマス。、お肴が披露され終わると、(新郎新婦は)盃に口を付け頂戴します。お肴は鶴亀、高砂、竹産島その他目出度い小謡の一節を謡います。[お肴はその席に相応しい謡が選ばれます]新郎がお礼の言葉を述べます(貰い切りでお返しはしません)「只今はご丁重なお盃を頂戴し、有難く幾久しく頂き納めます」と謝辞を述べます。

 結婚式の場合は、貰い切で、お返しはありませんが、その他の席では、先にお肴を頂戴した側が、差し上げた方に、同じように、お肴を添えて、返礼をします。これを「お加え」と称します。「只今はご丁重なお盃を頂戴し、有難く存じます。本来なら方々へ差し上げるべきところ略儀ながらご代表の方へ差し上げますのでお受けをお願いいたします。お肴につきましては△△様にお願いいたします」こんなやり取りを行います。目出度い席では、これを何回も繰り返し、一晩中宴が続いたこともあった様です。

 「松代藩には以前から『お盃の式』というのがあり、殿様が公的の場に臨まれた時、藩の泰平弥栄と藩主の健康長寿を祈って、代表者を選び、お盃を差し上げる習慣があった事をもとに、廃藩置県後、役人【県令など】の就任などの歓迎の宴などで、松代藩の習慣に倣って始めたのが、東北信の各地に伝わって定着したものだという。

 大体は宴の最後の方でやることが多いのですが、本来は宴の始まりに礼儀を尽くしておくことが座の決まりとして大切で、 酒の席というものは兎角心易くなり、乱れ勝ち、失礼勝ちとなるので、宴が始まったらお盃の礼式は済ませておくという事だったと言います。それを済ませたら、酒が回るにつれ大いに談笑し、唄ったり踊ったりもよいといわれていたそうです。ここら辺は、如何にも生真面目で、律儀な信州人の気質が出ているのではないかと思います。

 新・高井の風土記 
http://www.okadanouen.com/takaino/hokusinryuu.html を参考にさせていただきました。

 以下私の弟の結納の時の話です。私の弟は、中信のある村から嫁を貰う(!?)事になりました。結納のため、親父と親父の従兄を乗せて、片道60kmの道を小生が運転して相手の家に向かいました。一頻挨拶を済ませ、それでは結納・・という事になり、双方相対で座りました。列の真ん中に、お膳を据え、その上に重ねた杯を置き、さてこれから結納を始めるという段になったのですが、その時やおら叔父が列の端に移動し、風呂敷包から、義太夫の卓(なんていうのか解らなかったので取り敢えずこの言い方で失礼します)を組立て始めたので、嫁方の親族は何が始まるのかと不安顔をし出しました。「それでは親子固めのお盃を・・・」と発し、叔父は朗々とお肴を謡い始めたのです。何が何だかさっぱり解らず、目を白黒させ、兎に角杯にを受けるように促され、相手方は杯を受けたのであります。小生の親父は、予め話を通すようなタイプではなかったので、[或いは北信流は何処でも普通にやられている習慣とでも思っていたのか]、いきなり遭遇した北信流には本当に吃驚したようです。[何が何だか解らんうちの、どさくさまぎれの、親子固めの杯などは、果たして有効(!?)だったのだろうか?小生は心配になった!]

 結納のが終わり、談笑の場になったのですが、「北信流」の話題になり、「あれは何だったんですか?」などと、聞かれ、親父が遅ればせながら北信流について話をしたのだが、「あれが話しに聞く北信流ですか?」などと話しを合わせて戴いたので、「やれやれ!」と一息つきました。それにしても、山に囲まれ、何処に行くにも峠を越えて行かねばならないから、習慣も様々であるが、この北信流の結納にはさぞかし吃驚したことだろう!




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